私の部屋(寝室)には2年前の吉田文子先生の写真がある。
2年程前、ご自宅にお見舞いを兼ねて遊びに行った時、 私が撮った写真。 カメラを向ける私に吉田先生はベランダのお花の前で 「美人に撮ってよ! 美人に撮れたら遺影にするから!アハハッ!」 といって大笑い。 穏やかに微笑まれた先生の写真が撮れた。 撮ったその日から私の部屋に飾ってある。 毎朝起きると先生の写真が目に入るし、 毎晩寝る前にも目に入る。 私は毎日必ず写真の中の 微笑む先生に笑顔を返す事にしており、 先生亡き今も引き続き それが日課になっている。 先生のお通夜に伺った時、献花時に遺影を見て涙が出た。 ここ半年ほど電話でお声を聞かなかった事、 お見舞いに行かなかった事などが悔やまれた。 でも、コッソリ棺の中のお顔を見させて頂いた時には 涙は出なかった。 毎朝毎晩 自室でお会いしている写真の先生と変わらぬ 穏やかなお顔をしてらしたからかもしれない。 亡くなって3〜4日経っても悲しみは強くなく、 いつでも会える気がしてならなかった。 5日目の夜、大学生のピアノの生徒のレッスンが終わり、 生徒に宿題に出したベートヴェンソナタ『月光』3楽章を 自分でも久々にさらってみようと思い、楽譜を開いた。 そこには吉田先生の筆跡が。 「内声をよく聴き、感じるように!」 「1音1音心を込めて声に出して歌ってみること!」 「1音たりとも無駄な音は無し」 先生はいつも生徒達にメロディーや内声を声に出して歌わせ、 時には指揮をさせながら歌わせ、 または足踏みさせながら歌わせた。 そして歌う度に私に 「アナタ、やっぱり声楽に行きなさいよ! いい声してるから絶対声楽の方がいいわよ!!」 と必ず毎回仰った。 ヒネクレた私はそのありがたいお言葉を 「ピアノ科にいても上手じゃないんだから、声楽に行ったら? 声楽に行けばピアノはそんなに上手じゃなくてもいいし!」 という意味に受け取り、意地になってピアノを練習した。 だから余計に「アナタのピアノには心がこもってない」 と言われたっけ。 私の歌の道に転向する事になったのを一番喜んでくださったのが この吉田先生だ。 歌の道に進んで以来、お会いする度に 「アナタ、歌に行ってよかったわよね〜〜!! 私、自分の事のように嬉しいわよ!!」 と笑顔で背中を叩いてくださった。 楽譜に先生の筆跡を見たとたん、それらの思い出がいっぱい 溢れ出してきて、だ〜〜〜〜〜〜〜〜 …っと涙が流れた。 先生が亡くなってから早10日。 毎朝、「次の本番が成功するよう、今日も練習頑張ります!」 と、自室の先生の写真に語りかけている私。 「頑張らなくて良いのよ、リラックスを心がけなさいよ! アナタすぐムキになって突っ走るから。アハハッ!!」 という先生の声が聴こえるような気がする。
by mikale
| 2008-07-08 01:24
| 個人的なこと
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Comments(5)
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笹原勉
at 2010-04-15 22:23
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私は吉田文子先生のお父さん、明治大学の永田正先生のゼミに参加させて頂いたものです。学生時代に正月先生のお宅に伺い、いつも自慢の娘が吉田文子先生でした。お嬢さんにまつわる音楽のお話を聞かせて頂きました。どうして若くして旅立たれたのでしょうか?愛されていたんですね。。。。。。ほぼ40年くらいまえの思い出です。
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mikale at 2010-08-02 23:19
そうでしたか!文子先生曰く、「ウチの父は火事が大好きで、近所で火事があると飛んで見に行ってたのよ〜!」と。文子先生が亡くなられて2年。天国から私の勉強の様子を見てくださってるのかなぁ?
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笹原勉
at 2014-01-28 11:07
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載せて頂き、ありがとう御座います。文子先生が留学中されていたウイーンに、御家族の方々が何度も行ったお話を、永田先生のご長女さんから伺いました。音楽が溢れた良い所ですね。
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笹原勉
at 2015-06-07 07:14
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昨日、国音出の方に調律をして頂きました。恩師永田正先生の事を思い出します。奄美大島、文子お嬢さんとピアノについてのお話を伺うのが常でした。お宅にはグランドが2台あり、スタンウエイに纏わるお話も伺いました。
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mikale at 2015-07-09 22:50
笠原様
ご無沙汰しております。 文子先生が亡くなられて7年が経ちますが、いまでも先生のズッコケ振りや、楽しかったレッスンなどが思い出されます。先生のご子息ともつながっておりますので、たまに先生の話に花が咲いています。
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